2018年3月19日月曜日

ガウチョパンツの男

僕の友人に松本という男がいる。いや間違えた。失礼にあたる。ここでは「先輩」とでもお呼びして機嫌でもとっておこう。彼は河合塾マナビスでアドバイザーをしている。身長はかなり高く、横を歩くと首がつかれる。ごめん。盛った。そんなに差はない。ただ、大きいなと言えば多少喜ぶ。彼は簡単な男だ。彼は声を張らない。だから僕は彼の話の大半を理解していない。けど、笑っておく。それが社会で生きていくということだ。上手に生きているみたいだ、僕は。ちなみに彼はテニスが上手らしい。ずっとやっているみたいだ。けど知り合ってから早3年。彼が運動神経の良いところは見たことがない。テニスだけできるみたいなそんな変態的な人はいないだろう。きっとテニスもできないに決まっている。断言する。彼はいい人だ。ひたすらにいい人だ。僕がどんなに彼をいじっても怒らない。もはや先輩だと思って接してはいない。タメ。いや、後輩か。下だ。彼は長身で細身であるスタイルを一切活かそうとしない。本来、スキニ―とか履けばスタイルも活かせるだろう。だが彼は違う。7分丈のガウチョを履く。いや、それ足が太い俺が履くようなファッションだから。もったいねえ。5センチでいいから足の長さを分けてくれ。足が短いと言われ続ける俺からしたらいささか不可解である。さらに彼はスーツの上にグレーのコートを着る。サイズは決してあっていない。明らかに大きい。リュックは青い。そしてオレンジ色のラインが入っている。なんなんだそのデザインは。都会には売っていないだろう。どこで買ったんだ。あの人はたしか横浜市の端の端に住んでいるからか。あの町は薬局とバスターミナルしかないからな。しょうがない。そんなデザインのリュックも売っているのか。すげーなあいつは。そんなことを思いながら僕は明日もマナビスへと舞い戻る。

kitamura