2017年1月4日水曜日

息抜き




 私、たぶん、受かる。



 
 みなさま、この度は明けましておめでとうございます。本年も、何卒どうかよろしくお願い申し上げます。

 ということで、お正月のご挨拶。背筋が伸びる気持ちとは、このことだ。なんといっても、お正月は、天気が良い。私のまだ短い人生、曇った正月など見たことがない。必ず、晴れる。空気は澄んで、お日様が眩しい。あと、鳥が元気。
 私はと言うと、お恥ずかしい話、ご多分に漏れず、とても元気で、気分がよろしく、何故だか微笑みがこぼれてきてしまうような、清々しい気分に浸っております。何をやっても成功する、どこへ向かおうが未来は明るい、いや、決して変な薬を注射しているわけではないのだけれど、それでも、今年は喜びに満ちあふれた完全無欠な一年間になるのだという、絶対の確信を得ているような、どこか不思議な気持ちに襲われております。本当にいい日です。風が爽やかです。空気がおいしい。料理もおいしい。こたつは気持ちいい。みかんは、甘くて、ちょっと、すっぱい。
 正直な話、私は一応受験生なので、大晦日は遅くまで夜更かししないで、年を越す前にちゃんと寝てしまった。だから、新年お正月を認識したのは、もう日も昇った朝だったけれど、起きた瞬間、頭がすごくスッキリしていたから、すぐ、分かった。あ、年が明けたぞ、って。部屋中のすべてのものが、明けたんだぞ、ってこっちを見てた。それで私も、寝っ転がってるのが恥ずかしくなってきて、すんと起き上がって、部屋中すべてのものや洋服たちに、新年の顔見せ、ご挨拶。おはようございます、わたくし、本年も張り切って参ります。まだ、暗い部屋の中、一人であらゆる筋肉伸ばしてストレッチしてたら、カーテンの隙間から光がパァっと眩しく差し込んでたから、ちょっと木漏れ日にキスしてあげた。どうしてこんなに心が清らかで穏やかで、それでいてワクワクしているんだろう。スキップしながらリビングに出ると、お母さんが、もう、おせちか何かを準備している音が聞こえてきたから、私もたまには手伝おうかしらと、キッチンへ入っていって、おはよう、お母さん、おめでとう、って言ったら、お母さんはちっとも笑わずに、おはようございます、今年もよろしくお願いします、ってまっすぐ私の目を見て言うもんだから、なんだか涙が出そうになった。さっきまで自分がきれいになっただの、余計な垢が取れただの思っていたのはなんだったんだと、元旦のお母さんの美しさの前では、私なんかまだまだガキンチョなのだと思い知って、もうとにかく恥ずかしさをやりきれなくなって、こちらこそよろしくお願い致します、と綺麗な言葉で言い直したのだけれど、それでもやっぱりお母さんは、ちっとも笑わずお辞儀していた。
 おせちは、朝の遊園地。かまぼこは、白とピンクと順番に並んでいるけれど、あれは各家のお母さんが仕組んだ粋な計らいで、お店で買う時には、白とピンクは一本ずつバラバラで、家へ買って帰ってから、キッチンで包丁使って、白とピンクが交互にくるようにこっそり並べ替えられている。だから、私は、おせち料理ではかまぼこが一番好き。けれど、そんなかまぼこの秘密も知らずに、私のバカでかわいいかわいい弟は、白、ピンク、白、ピンクと、焦ったようにバクバクムシャムシャ食べている。それを見た私は、こら、お行儀が悪いから、もっとゆっくり食べなさい、と弟に言ってやって、自分はピンと背筋を正して、熱い緑茶なんかを飲んでみる。遠くの方では、お母さんが、お父さんの仏壇におせちを持っていって、いい香りのするお線香をあげると、あの、チーンを鳴らす。音が心に沁み渡る。一月一日の朝は、完全無欠で、美しい。
 今日は、息抜きとか、言ってる場合じゃない。今日の私は、スポンジ娘。あらゆることを、吸収するの。英語、日本史、かかってこい。全て覚えてあげましょう。今年は、私の、年になる。


2017年 元旦