2017年1月26日木曜日

シュッ

まただ。

何度目であろうか、紺色のスーツ姿のジェントルマンは、また僕の目の前でマジックをしている。僕が仕事を一つ終え、ふと、区切られた一つの小さな部屋の方に目をやると、そこから出てきた彼はカラッカラッと、自分の手のひらに一粒のミンティアを取り出し、それをあたかも息を吸うように、シュッという音ともに造作もなく消してみせる。その動作はあまりにも自然なもので、最初から手元になど、何もなかったと錯覚させるほどのようなものである。やあ、奇怪。まさにイリュージョン!だが彼は、まるで何事もなかったかのように、マジシャン、いや、、どこか少年のような悪戯っぽい笑みを浮かべて、また、あの小部屋へと戻っていくのである。