2017年1月12日木曜日



俺は天才。俺は天才。俺は誰よりも頭が良い。何も勉強しなくとも、その辺のやつには負けない。そんな俺が、たまに、こそこそ努力したりしているんだから、絶対に負けるわけがない。生まれが違う。血が違う。父と母の良い所だけ受け継いだ。父の頭の回転が速いところ。母の記憶力がずば抜けているところ。それが俺という超健康体の中で溶け合い、爆発している。だから、俺は天才。俺は天才。俺は、忘れ物をしたことがない。転んだことがない。非常に注意深いからだ。父もいまだ転んだことがないらしい。それを小さい頃から風呂で聞かされてきたわけだから、俺はどうしても転ぶわけにはいかなかった。そうして、今の俺ができた。俺は注意深い。ミスなんて言葉とは、無縁の男だ。マークミスなんて、するわけがない。俺は、いつだって注意深い。本番当日は、あまりの緊張感からか、考えられないようなことが起こったりするそうだ。それぐらい、緊張という魔物はおそろしい。しかし、幸運なことに、俺は緊張したことがない。いや、緊張とは、なんだ?俺は知らない。緊張なんてのは、無縁どころか、違う惑星の事象のようにしか感じられない。俺は、いつだって、俺だ。俺の母は、ポーカーフェイスだ。歯を出して笑っているいるところを、いまだ見たことがない。感情が無い人間なのかもしれない。俺も、似た。俺は、クールだ。浮かれたり沈んだりすることは、ほとんどない。常に、冷静。冷静に、自分の前の現実だけを見る。余計な感傷は起こさない。自分の実力を出し切る。そんなことは、言われないでも分かっている。俺にとっては、できて当たり前のことなのだ。俺のメンタルは、それぐらいに、強い。強いのだ。俺は、強い男なのだ。動じない。山だ。俺は、山。動かざること俺の如し。風林火山すべてをつかさどる男、俺。軍師、俺。総大将、俺。俺は、勝つ。俺が、負けるわけがないんだ。なぜなら、俺は、真面目に生きている。自分の有り余る才能に溺れることなく、謙虚に、誠実に、生きている。それが、人間として最も立派なことなのだと俺は信じている。俺は、ポイ捨てをしたことがない。俺は、あの厳しい中学時代も、いじめられはしたが、いじめることだけはしなかった。野球の練習も皆勤賞だ。洗濯や洗い物、風呂掃除など、家事を手伝うことも忘れなかった。俺は、嘘をつかない。ついたとしても、自分が傷つく嘘だけだ。俺は、誰も傷つけない。そのことには、髪が抜け落ちてしまうほど、苦心してきた。俺は、頑張っている。日々、血を吐きそうになるほど、頑張っている。俺は、俺をかばったことがない。俺は、他人のために生きてきた。俺は、もはや、俺などというものは捨ててきたつもりだ。俺は、隣人を笑わせるために、血反吐を吐いて俺を利用する。それが、俺の道なのだ。それが、選ばれた男の道なのだ。俺は天才。俺は、天才。俺は、誰より苦しんできた。俺は、誰より道のために励んできた。そんな俺を、神が見捨てるはずが無いのだ。俺は、報われる。俺は、勝つ。必ず、勝つ。寝坊もしないし、緊張もしない。マークミスなどするわけない。俺は、本気で挑んで、最高の結果を出す。当然だ。誰だと思っていやがる。俺だ。天才だぞ。負けるわけがない。勝つに決まってる。その辺のやつとは、何もかも違うんだ。やってやる。そうだ、やってやるんだ。見ていやがれ。見捨てるなら見捨てろ。余計なことを話した。神の助けなんていらねぇんだ。俺は、俺の力で勝てるんだ。見ていやがれ。やってやる。やってやる。



といったことを、心のうちで繰り返しながら、自分の豆腐メンタルを奮い立たせ、なんとかセンター試験に向かいました。自己暗示は、いいですよ。やってやりましょう。やってやりましょう。

清水 優